2年間の家庭内別居と、その後の2年間にわたる別居生活を経て、離婚が成立した時には50歳を超えていました。
私にとって離婚は勢いで決めたものではありません。
長い時間をかけて悩み、考え、ようやく出した答えでした。
離婚が確定した日、胸に込み上げてきたのは喜びではありませんでした。
ただ、ほっとしたのです。
「ああ、終わったんだ」
長いトンネルをようやく抜けたような気持ちでした。
結婚してから長い年月を共に過ごし、二人の子どもを育て、家族として生きてきました。
楽しかった思い出がなかったわけではありません。
若い頃の私は、自分が離婚する人生を歩むとは思ってもいませんでした。
結婚して、子どもが生まれ、家族で年を重ねていく。
きっと誰もが思い描くような未来を信じていました。
けれど人生は思い通りにはいかないものです。
夫婦というのは不思議なもので、大きな出来事がなくても、少しずつ変わっていくことがあります。
気づけば会話が減り、お互いの気持ちを話すこともなくなっていました。
度重なる夫の浮気と無視

子どもたちが小さい頃は、毎日が慌ただしく過ぎていきました。
学校行事に仕事、家事に育児。
夫婦のことよりも、目の前の生活を回すことに精一杯でした。
そんな中で、夫の浮気を疑うことが何度かありました。
ですが、私は見ないふりをしていました。
現実に向かうのが怖かったのかもしれません。
意味もなく出張や朝帰りが増え、あからさまな言い訳を言い放つ夫に、私は理由を問いただしました。
すると、ある時から夫が口を聞かなくなったのです。
おかえりと言っても、おはようと言っても返事が返ってきません。
思い余って強く言うと、機嫌が悪そうにきつい言葉を浴びせてきます。
次第に私は夫に話しかけるのが怖くなってきました。
インターネットで調べたら、「モラハラ」という言葉が出てきました。
もしかしたら、これがそうなのかもしれないと、その時、初めてそう思いました。
私は夫と顔を合わせないように、夫が帰ってくる前に寝室に引きこもり、夫はリビングで寝るようになってきました。
いわゆる家庭内別居の始まりです。
2年間の家庭内別居生活

家庭内別居は2年間続きました。
同じ屋根の下にいるのに、一人で暮らしているような感覚。
けれど、本当の一人ではない。
この曖昧な距離感は、想像していた以上に心を疲れさせました。
家なのに心が休まらない。
相手の気配に気を遣い、顔色をうかがい、静かに息をひそめるように暮らす日々。
今振り返ると、あの頃の私は、自分でも気づかないうちにずいぶん無理をしていたのだと思います。
そのうちに私の体調に変化が出てきました。
食事を全く受け付けなくなってきたのです。
最初は病気かと思いましたが、病院をいくつか受診していくうちにそれは精神的なものだと判明しました。
離婚を考え始めたのは、その頃でした。
けれど、すぐに行動に移したわけではありません。
下の子どもが結婚を控えていたからです。
親の都合で、子どもの大切な節目に影響を与えたくありませんでした。
だから私は決めました。
子どもの結婚を見届けるまでは待とう。
そして、その間に準備をしよう。
離婚は感情だけでは進められません。
お金のこと、住む場所のこと、手続きのこと。
知らなければならないことが、たくさんありました。
離婚の準備を始める

インターネットで情報を調べ、勇気を出して弁護士にも相談しました。
初めて法律事務所の扉を開けた時は、緊張で手が震えたのを覚えています。
弁護士からは、「別居した方が離婚は進めやすいですよ」と助言を受けました。
そして私は、夫の留守中に家を出る決断をしました。
シングルマザーとして私たちを育ててくれた母は、すでに他界していました。
母が残してくれた実家には離婚経験のある妹と独身の末妹が二人で住んでいました。
妹たちは、そこへ私が飼っていた愛犬も一緒に受け入れてくれました。
血のつながった家族の存在に、どれほど救われたかわかりません。
長年暮らした家を出た朝は、とても静かでした。
怒りよりも悲しみよりも、「ここまでよく頑張ったな」という気持ちの方が大きかったことを覚えています。
別居、調停、そして裁判

別居をしたからといって、すぐに離婚できたわけではありませんでした。
弁護士に依頼し、話し合いを進めましたが、協議ではまとまらず、調停へ。
そして調停でも折り合いがつかず、裁判へと進みました。
別居してから離婚が成立するまで、二年。
長い二年でした。
働きながら新しい生活を整え、婚姻費用分担金を受け取りながら暮らしていました。
生活は成り立っていても、心が落ち着くわけではありません。
本当に離婚できるのだろうか。
いつ終わるのだろうか。
先の見えない時間は、思っていた以上に長く感じられました。
離婚は書類一枚で終わるものではなく、心の整理にも時間が必要なのだと、その時初めて知りました。
そして、ある日。
離婚が確定しました。
嬉しさよりも先に込み上げてきたのは、安堵でした。
「ああ、終わったんだ」
肩に入っていた力が、すっと抜けていくのを感じました。
まとめ/離婚して手に入れたもの

離婚をしたからといって、人生の問題がすべて解決したわけではありません。
これからの生活もありますし、不安がなくなったわけでもありません。
それでも、一つだけ確かなことがあります。
今の私は、家に帰る時に緊張しません。
誰かの機嫌をうかがわなくていい。
静かに眠ることができる。
そんな当たり前の毎日が、こんなにも穏やかなものだったのだと知りました。
50歳での離婚は、決して簡単な決断ではありませんでした。
でも、あの二年間の家庭内別居があったからこそ、私は自分の気持ちと向き合うことができたのだと思います。
離婚が正解だったのかは、これから先の人生が教えてくれるのでしょう。
ただ今の私は、自分で選んだ道を、自分の足で歩いています。
それだけで十分なのかもしれません。
あの時の私と同じように、今、夫婦関係で悩み続けている方もいるかもしれません。
離婚することが正解とは言いません。
けれど、自分の心と体を大切にしながら、後悔しない答えを見つけてほしいと思います。
私にとって離婚は、人生を終わらせる選択ではなく、新しい人生を歩き始めるための選択でした。


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